どんでんがえし
「全く、この頃の親は、おバカさんが多いですよ。自分の子供をしつけようとはせず、少年鑑別所にさえ入れとけば更生すると信じてる」
なかば憤慨するような口調で、話しかけてきたのは、俺と同年代の温厚そうな中年男だ。
なんでも、子供二人が中学の時、麻薬に手をだしたが、沢木のおかげで立ち直り、現在は通信制高校に通っているという。
俺は、麻薬の恐ろしさは、高校の時から知っていた。
わがままの自己中心になり、身近な友人はみな、離れていき、中毒者ばかりが集まり、より強い刺激を求めて覚せい剤へとはまっていく。
‘麻薬やめますか。人間やめますか’という標語があるが、まさにその通りだ。
女性の場合だと、風俗営業に利用される恐れがあるので、即実刑だという。
そこに、暴走族風のヤンキー風の少年が、乱暴なドアの音を立てて、入ってきた。
「おい、沢木のおっさん。俺の親によくちくりやがったなあ」
沢木が対応した。
「別に僕がちくらなくっても、いずれはわかることだよ。隠していたもので、ばれないものはないんだ。そんなことよりも、君は自分が立ち直ることを考えた方がいい」
沢木の意見は、正論である。
多分、少年はシンナーでもやってるんだろうか。目がうつろで、唇が乾いている。
少年は、いきなり、椅子を振り回しそうになった。
「やめなさい」
沢木 裕花が、後ろから少年の腕をつかんだ。
「こらーっ」
少年の目はつり上がり、呪うような形相で裕花を睨みつけた。
「くそばばあ。早く死ねよ」
わけのわからぬことを叫びながら、少年は出て行った。
俺は、目の前でとてつもない光景を見てしまった。
息子の正人が、ああなったら、俺はどう対処したらいいんだろう。
そんな不安が、俺の胸をしめつけた。
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