どんでんがえし
なんだ。これは。ホストクラブ調の養毛サロン編か。
‘当店のイケ面マッサージ君は、当店独自の方法で、増毛した人ばかりです。薄毛の悩みって、異性に言えるものではありませんよね。でも、同性になら、気軽に愚痴をこぼせるし、マッサージ君と一緒に増毛していこうとするサロンです。当店は、アルコールは置いておりませんが、増毛に効果的な漢方薬を飲みながら、その人に合ったマッサージをいたします’
その右には、マッサージ君の増毛前と、増毛後の写真がでかでかと載せられている。
二十五歳くらいの男だろうか。まあまあのイケ面だ。
増毛前は、つむじが薄かったが、増毛後は、ふさふさと盛り上がっている。
‘当店は、漢方薬とマッサージという、きわめてシンプルな方法で、増毛していきますので、過剰な料金は一切、頂きません’
本当なのだろうか?
薄毛やハゲなど、人間の弱みに付け込んだ、新たな悪徳商法ではないのだろうか?
しかし、サロンは、観葉植物が置いてあって、照明もオレンジ色だ。
一度、行ってみる価値がありそうだ。
一人ぼっちの部屋には、慣れてるくせに、今日に限って、不安感がよぎる。
これから俺、どうやって生きていったらいいんだろうか。
勿論、明日もハローワークへは行くが、道は開かれるのだろうか。
うつうつとした気分を吹き飛ばす為に、焼酎のお湯割りを飲もうとしたその時だった。
けたたましく鳴る電話のコールに、不吉な予感がした。
「もしもし、結城 和人さんですね。今井 良人君をご存じですね」
俺と、元妻との間の一人息子だ。今、普通科高校一年生だ。
「警察です。そちらの息子さんが、覚せい剤と婦女暴行で補導されました。保護者として、ご連行願います」
俺は、左手に持っていた、グラスを落とした。
そんな馬鹿な。
俺の息子は進学校に通い、成績も学年から十番以内だったはずだ。
そんな俺の自慢の一人息子が、覚せい剤と婦女暴行となどという、チンピラまがいのことをやらかすとは、人違いではないのか?
俺は、警察署に行きながら、それが、事実だったらどんなに楽かと期待していた。
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